施工管理技士には1級と2級があり、それぞれ取得のメリットや難易度などが異なります。
そこで本記事では、1級と2級の違いについて詳しく解説します。
建設業界で仕事をしていきたい人や、施工管理技士の資格取得を検討している人はぜひ参考にしてください。
施工管理技士とは
施工管理技士とは、施工管理技術検定に合格することで取得できる資格です。建設業法27条に基づいた国家資格となっており、主に建設業界で働く人が取得します。
施工管理技士の主な仕事は、工事現場の安全、スケジュール、品質などを管理することです。
具体的な業務は次の通りとなっています。
- 施工計画の作成
- 現場全体の管理
- 現場での安全確保
- 機材や材料の調達
- 施工主やスタッフとのコミュニケーション
上記のような作業を専門的に行うのが施工管理技士の仕事です。基本的にデスクワークが多いですが、現場の状況によっては作業を手伝うこともあります。
施工管理技士1級と2級の違い
以下では、施工管理技士の1級と2級の違いについて下記3つの観点で解説します。
- 仕事内容の違い
- 受験資格の違い
- 難易度の違い
仕事内容の違い
1級と2級では、任せられる仕事内容が違います。
たとえば、土木施工管理技士の1級を取得していると監理技術者と主任技術者になれますが、2級では監理技術者になることができません。
主任技術者とは、すべての工事現場での設置が法律により義務付けられている人員です。この主任技術者は2級土木施工管理技士の資格を取得することによりなれます。
一方の監理技術者とは、工事にかかる請負金額の合計が4,000万円を超える場合に設置が義務付けられている人員です。この監理技術者は、1級土木施工管理技士を取得することでなれます。
つまり、1級と2級では任せてもらえる現場の規模に違いが出るということです。
受験資格の違い
建築施工管理技士の場合、1級と2級の受験資格である必要実務年数は、学歴により異なります。
たとえば、1級建築施工管理技士の学歴別の必要実務年数は次の通りです。
必要実務年数 | |
中卒 | 15年以上 |
高卒 | 11年6ヶ月以上(指定学科卒業の場合は8年以上) |
短期大学卒 | 7年6ヶ月以上(指定学科卒業の場合は5年以上) |
大学卒 | 4年6ヶ月以上(指定学科卒業の場合は3年以上) |
一方、2級建築施工管理技士の学歴別の必要実務年数は次の通りとなっています。
必要実務年数(実地試験) | |
中卒 | 卒業後8年以上 |
高卒 | 4年6カ月(指定学科の場合は卒業後3年以上) |
短期大学卒 | 3年以上(指定学科の場合は卒業後2年以上) |
大卒 | 1年6カ月以上(指定学科の場合は卒業後1年以上) |
このように、建築施工管理技士の受験資格は、学歴により必要な実務年数が大きく異なります。また、実務年数は、該当する現場での経験のみ実務年数に数えられるため注意が必要です。たとえば、建築施工管理技士の場合は、建築に関わる現場経験のみを実務年数として加算できます。
なお、実務年数をごまかすと資格取消等のペナルティを受ける可能性があるため注意しておきましょう。
難易度の違い
1級と2級では、試験の難易度も異なります。
20221年に行われた2級建築施工管理技士の一次試験合格率は49%で、1級建築施工管理技士の一次試験の合格率は436.8%と、2級より13%低い結果となりました。
その年の受験者数や試験内容によって多少の違いはあるものの、2級より1級が難しいと考えて間違いないでしょう。
2級施工管理技士の資格を取得するメリット
2級施工管理技士を取得するメリットは次の通りです。
- 主任技術者になれる
- 1級よりも簡単に取得できる
前述の通り、2級施工管理技士を取得することで主任技術者になれます。主任技術者になれば仕事の幅が広がってやりがいが増すことに加え、キャリアアップの道も開かれます。主任技術者に資格手当を支給する企業も多いため、年収アップにもつながるでしょう。
また、一次試験に合格して2級施工管理技士補の資格を取得すると、監理技術者のサポート役として経験が積めるようにもなります。
1級施工管理技士よりも受験資格や試験の難易度が易しく、取得しやすいというのもメリットの一つと言えるでしょう。1級は豊富な実務経験が必要なことに加え、資格の難易度も高いため、まずは2級施工管理技士の取得を目指すとよいです。
1級施工管理技士の資格を取得するメリット
1級施工管理技士の資格を取得するメリットは次の通りです。
- 監理技術者になれる
- 昇進・昇給しやすくなる
- 転職しやすくなる
前述の通り、1級施工管理技士の資格を取得することで監理技術者になれます。主任技術者よりも大規模な工事現場の管理ができるようになるため、やりがいもその分大きくなるでしょう。
また、1級施工管理技士は建設業界全体でもまだまだ少なく、希少価値が高いです。そのため、1級施工管理技士の有資格者になれば高額な資格手当の支給や昇進につながりやすくなります。
さらに、1級施工管理技士の有資格者は市場価値が高いため、転職も有利になります。大手ゼネコンを含む多くの企業から歓迎されるでしょう。
施工管理技士に求められるスキル
施工管理技士に求められるスキルは次の通りです。
- コミュニケーションスキル
- スケジュール管理スキル
- 継続力
1.コミュニケーションスキル
施工管理技士は、工事現場の作業員や職人に加え、施工主や近隣の住民などともやり取りを行います。そのため、施工管理技士には高いコミュニケーションスキルが求められます。
また施工管理技士は、単に他人と仲良くできるだけでなく、仕事のパートナーとしての関係性を築かなければなりません。ときには厳しい指示をして作業員に動いてもらう場面もあるでしょう。そのため、施工管理技士にはリーダーシップも求められます。
2.スケジュール管理スキル
施工管理技士にはスケジュール管理スキルも求められます。建設現場は事前に工期が決められており、施工管理技士はその工期に合わせて現場を完成させる必要があるためです。
設定された工期を過ぎてしまうとクライアントからの信用を失ってしまうため、施工管理技士は責任感をもって仕事を遂行しなければなりません。
とくに建設現場は工種の入れ替わりが多いため、現場の状況と人員配置に考慮した高度なスケジュール管理が求められるでしょう。
3.継続力
施工管理技士になるためには継続力も求められます。1級施工管理技士を目指すためには豊富な実務年数が必要なためです。
とくに未経験の状態から1級の取得を目指す場合は、長くて10年以上の実務経験を必要とする場合があります。その間、やめずに仕事を続けていくための継続力が求められるというわけです。
また、未経験から施工管理技士を目指す場合、最初は現場の手伝いや雑務などがメインとなるため、コツコツと業務を行える継続力が必要になります。
まとめ
本記事では「1級施工管理技士と2級施工管理技士の違い」「施工管理技士の資格を取得するメリット」などを紹介しました。
1級施工管理技士と2級管理技士の大きな違いは、任せてもらえる現場の規模や受験資格などにあります。
1級は建設業界にもまだまだ少ないことから需要が高いため、年収アップや転職がしやすくなるといった複数のメリットがあります。
一方の2級も取得により仕事の幅が増えることから、やりがいや給与アップが見込めます。
ただ1級の取得には実務経験が求められるケースが多いため、まずは2級の取得から目指すとよいでしょう。
百田 遼太郎