施工管理のテレワーク化は進み、リモートでできる業務も少しずつ増えています。DX化を推奨する働き方改革の影響もあるため、今後さらにリモート化は進むでしょう。
そこで本記事では、テレワーク化が進んでいる施工管理の業務と、テレワーク化によるメリットなどを紹介します。
テレワークやリモートワークでできる施工管理の仕事に興味がある人はぜひ参考にしてください。
施工管理のテレワーク導入率は増加している
施工管理のテレワーク導入率は増加しています。
【引用】通信利用動向調査報告書-総務省
このように、総務省が行った調査によると令和元年の導入率が22.5%だったのに対し、令和3年では57.9%にまで伸びていることが分かりました。およそ2倍近く伸びたのは、コロナウイルス感染拡大の影響によるものだと考えられます。
施工管理のテレワーク化できる業務4選
施工管理でテレワーク化が可能な業務は次の通りです。
- クラウドでの情報管理
- アプリでの写真整理
- オンライン打ち合わせ
- 建設業務を遠隔操作で対応
1.クラウドでの情報管理
すでに多くの企業で導入されているのが、クラウドでの情報管理です。クラウドとは、インターネット上の保管スペースです。端末の中ではなくインターネット上で保管されるため、スマートフォンやタブレットなどから誰でも自由にアクセスできます。
クラウドの導入により、これまでパソコンや紙媒体で管理していた図面や作業員名簿などをクラウド上で管理できるようになりました。
また、クラウドで情報やデータを管理することで、協業先とデータ共有しやすくなることに加え、チャットやメールで連絡する手間を省くことも可能です。
さらに近年の建設業界では図面や工程表などを電子化するサービスも普及し始めています。図面をペーパレス化することで、必要な図面の検索やコスト削減につながります。
2.アプリでの写真整理
従来は、工事現場をデジカメで撮影し、手作業で管理することが主流でした。しかし近年ではテレワーク化の推進により、工事現場の写真を手間なく管理できるアプリが普及しています。撮影した写真を自動でジャンル分けしてくれるという非常に便利なアプリで、クラウド上での管理も可能です。
クラウド上で管理できるうえに写真一枚一枚を仕分けする必要がなくなったため、現場監督や施工管理職の作業量を大幅に削減しています。
3.オンライン打ち合わせ
建設業の仕事では、協力会社に外注する業務が多いため、打ち合わせの機会も必然的に多くなります。以前は対面での打ち合わせが主流だったため、施工管理はたくさんの時間を打ち合わせに使っていました。
しかし、現在はコロナウイルス感染拡大の影響もあってオンライン打ち合わせが主流となっています。
オンラインで打ち合わせすることで、他の業務に使える時間が増えるため、施工管理の残業時間を削減することにもつながりました。
また、オンライン化に伴い、会議の必要性を見直す機会にもなったため、会議の回数自体も減少傾向にあります。
4.建設業務を遠隔操作で対応
建設業務を遠隔操作で対応するなど、建設業にICT(情報通信技術)を導入する試みも進んでいます。この試みをi-construction(アイ・コンストラクション)とも言います。ICTの導入が進むことで、作業員の負担軽減、現場作業の効率化などに期待できるでしょう。
具体例として、ショベルカーなどの建設機械を遠隔操作できる機器の導入や、操縦のリモート化などが進んでいます。すべての現場で運用されるのにはまだ少し時間がかかりそうですが、着実に準備が整い始めているといえます。建設機械の遠隔操作や操縦のリモート化が進めば、現場の安全性と効率性が飛躍的に向上するため「建設業はつらい」というイメージも少しずつ払拭されていくでしょう。
テレワークの導入で施工管理も働きやすくなる3つの理由
テレワークの導入で施工管理が働きやすくなる理由は次の通りです。
- 作業の効率化
- 人材不足の解消
- トラブル対応がしやすくなる
1.作業の効率化
建設機械のリモート化や打ち合わせのオンライン化により作業を効率化できます。効率化により業務の負担が減るだけでなく、労働時間の削減にもなるため、ストレスフリーな職場環境を実現しやすくなるでしょう。
また、スマートグラス(遠隔で指示をもらえる機器)の導入により、経験が少ない施工管理でも遠隔で指示を受けられるようになりました。これにより、スキルがなくてもスムーズに作業できるようになることに加え、生産性の向上にもつながります。
2.人材不足の解消
テレワークの導入は人材不足の解消にもなります。先ほど紹介したスマートグラスの導入や作業の効率化により、若手が定着しやすくなるためです。慢性的な建設業界の人材不足を解消できれば、現場で働く一人ひとりの労働量を削減できます。その際、一番大きな恩恵を得られるのは現場を管理する施工管理や現場監督でしょう。
また、スマートグラスは、音声だけでなく映像も遠隔で共有できるため、現場から離れていても実際の現場を見ながら指示できるようになります。
スマートグラスが普及すれば、施工管理職の完全リモート化も実現するかもしれません。
3.トラブル対応がしやすくなる
以前までは、トラブル発生時にメールや電話で指示を仰ぎ、着手するというのが一般的な流れでした。しかし現在では、打ち合わせのオンライン化や、スマートグラスのような遠隔作業支援システムの導入によりトラブル対応がしやすくなっています。
また、トラブル発生から対応までの時間も短縮できるため、トラブルによる被害を最小限に抑えることも可能です。これにより、施工管理の身体面だけでなく、精神面での負担も軽減されるでしょう。
施工管理のテレワーク化が遅れている理由
施工管理のテレワーク化が遅れている理由は次の通りです。
- IT環境の整備不足
- 連絡体制が整っていない
1.IT環境の整備不足
施工管理のテレワーク化が遅い一番の理由は、IT環境の整備不足だとされています。
たとえば、テレワークで仕事をするためには、情報漏洩などのセキュリティ面を考慮し、会社側からパソコンや各種ITサービスを提供する必要があります。従業員が多い企業などは費用も高くなるため、導入に踏み切れないという場合もあるでしょう。
また、ITシステムに関する知識やノウハウが不足している企業があることなども、テレワークの導入に遅れが出ている原因だと考えられます。
2.連絡体制が整っていない
公共工事を発注する国土交通省や建設業者との間で、必要な連絡体制が整っていないというケースもあります。
本来ならテレワークの導入で効率化できる作業も、うまく連携が取れていないことから導入が進んでいないケースもあるようです。よって、建設業界のテレワーク化を加速させるためには、国と密接な連絡体制を構築することが重要になると言えます。
まとめ
本記事では「施工管理でテレワーク化できる業務」「テレワークの導入による施工管理のメリット」などを紹介しました。
コロナウイルス感染拡大の影響により、建設業界でもテレワーク化が急速に進みました。しかし、まだ完全に導入されたわけではありません。
とはいえ、働き方改革の推進により今後さらにテレワーク化が進むことが予想されているため、施工管理の作業はより効率化されるでしょう。効率化が進めば働きやすい職場環境の実現にもつながります。
百田 遼太郎