建設業界は現在、働き方改革の導入・推進により劇的な変化を遂げようとしていますが、施工管理職にはどういった変化があるのでしょうか。
本記事では、働き方改革の導入によって起こった施工管理の変化と、建設業界が抱える3つの問題について解説します。
建設業界が抱える問題点や、施工管理の労働環境が今後どうなっていくのかを把握しておきたい人は、ぜひ参考にしてください。
建設業が抱える3つの問題
建設業が抱える3つの問題は次の通りです。
- 休日が少ない
- 労働時間が長い
- 仕事量が多い
それぞれの問題について見ていきます。
1.休日が少ない
建設業に対し、休日が少ないというイメージをもつ人は多いです。しかし、現在は後述する長時間労働への対策もあり、労働環境が大幅に改善されています。
とはいえ、労働時間が変化しても工期があることには変わりません。そのため、悪天候や現場でのトラブルなどにより工期が間に合わない際は、休日を返上して働くこともあります。これは仕事の性質上、仕方のないことです。
もちろん、中には土日出勤を一切していない企業もあります。労働環境の良し悪しについては、就職する前に確認しておくことが大切です。
2.労働時間が長い
施工管理は労働時間が長くなってしまいがちです。
施工管理の仕事は、作業員や職人が出勤する8時よりも早くに現場入りし、朝礼や仕事の準備などを行います。その後、現場で業務をこなし、作業員が退勤したあとは図面作成や報告書などの書類作成にとりかかります。このように施工管理は他の従業員より作業量が多いため、どうしても労働時間が長くなってしまうのです。現場の状況によっては、20時や21時を過ぎることもあるでしょう。
しかし、後述する働き方改革の推進により、そういった残業時間に対する規制も義務付けられることが決定しています。規制を破ると企業は法により罰せられるため、労働環境は着実に改善へと向かうでしょう。
3.仕事量が多い
施工管理は現場を統括する立場であるため、仕事量が多いです。施工管理の主な仕事である四大管理に加え、先ほど紹介した書類作成なども含まれます。
また、施工管理は立場上、さまざまな立場の人と関わり合いながら仕事を進めます。そのため、ときには立場の異なる人との間で板ばさみに合い、精神的に疲弊することもあるでしょう。とくに人とコミュニケーションをとることに対して苦手意識がある人は、つらいと感じるかもしれません。
こういった仕事量の多さも、次に解説する働き方改革の推進により緩和されています。
建設業で推進されている働き方改革3選
建設業で推進されている働き方改革は次の通りです。
- 長時間労働への対策
- 生産性の向上
- 適切な給料払い
上記の働き方改革により「現状がどのように変化しているのか」という点についても解説します。
1.長時間労働への対策
国土交通省が打ち出した働き方改革のメインとされているのが長時間労働への対策です。
具体的な施策の内容は次の通りとなっています。
- 時間外労働の上限指定
- 週休二日制の導入
- 発注者の特性に考慮した工期設定
時間外労働の上限指定と週休二日制の導入により、施工管理は休日をとりやすく、残業も少なくなります。
また、以前は工期がひっ迫すると施工管理や作業員がやむを得ず長時間労働を強いられていました。国はこの状況を変えるために、発注者と現場の特性を考慮し、適切な工期設定を行うためのガイドラインを作成する予定です。
ガイドラインが完成すれば、長時間労働の根本的な解決につながるでしょう。
2.生産性の向上
建設業界では、デジタル技術の導入による生産性の向上も見込まれています。
近年、日本ではDX化を推進する企業が顕著に増加していますが、建設業界でも同様にデジタル技術の導入が進んでいます。
たとえば、電子契約の有効化によるコスト削減、作業ロボット導入による人的リソース削減などが進んでおり、注目が集まっています。
とくに施工管理においては、遠隔で視野や音声を共有しながら指示ができるスマートグラスの導入が期待されています。
建設業は、人による作業が多いため、デジタル技術の導入により大幅なコストカット、省人化などが見込まれるでしょう。
3.適切な給与支払い
建設業界では、働き方改革の一環として給与面での改善も進められています。
具体的には、建設キャリアアップシステムの導入や社会保障面での改善です。建設キャリアアップシステムとは、建設業界に勤める人が自身のスキルを登録できるクラウド型のシステムで、建設業を営む事業者も閲覧できます。
建設キャリアアップシステムを導入することで、技術者は自分にマッチした仕事を見つけやすくなり、事業者も欲しい人材を見つけやすくなります。過去の経歴を照らし合わせたうえで採用につながるため、技術者はスキルに合った給与や待遇を得やすくなるでしょう。
施工管理を選ぶ人が多い3つの理由
施工管理を選ぶ人が多い3つの理由は次の通りです。
- やりがいがある
- 仕事が安定している
- 建造したものが後世の残る
まだ働き方改革の導入に十分に進んでいない建設業界で、施工管理の仕事を選ぶ人が多い理由について解説します。
1.やりがいがある
施工管理は、一つの現場を適切に管理し、大きな建造物を完成させる責任感のある仕事です。建造物を完成させるためには、職人や大工といった多くの人材をまとめ、けん引していく必要があるため、大変なこともありますがその分やりがいも大きいです。
また、施工管理は、トンネルや道路といった公共のライフラインに加え、一軒家やマンションなど、人や社会の役に立つものを作る仕事でもあるため「世の中に貢献できている」という強いやりがいも感じられます。
2.仕事が安定している
施工管理の仕事は安定しています。都市の再開発工事や、トンネル、道路の大型改修工事など、建設業には幅広く根強い需要があるためです。
また、施工管理の国家資格である施工管理技士を取得することで、現場での設置が義務付けられている主任技術者になれます。1級施工管理技士を取得すれば、建設業界での需要がさらに高まるため、60代になっても年収を下げずに施工管理として活躍することが可能です。
こういった理由から「手に職を付けたい」「安定した職業に就きたい」と考えている人は施行管理を選ぶ傾向にあります。
3.建造したものが後世に残る
建造したものが後世に残るという点も、施工管理の人気が高い理由の一つです。マップや地図にも残り続けるため、それらを見るたびやりがいを感じられます。
また将来、子どもや孫ができた時に「自分が中心になってこの建物を完成させた」と自慢することもできるでしょう。
やりがいを感じられるのと同時に、自分の作ったものが少しずつ社会に増えていくという感覚が味わえるのは、施工管理として働くメリットの一つと言えます。
まとめ
本記事では「施工管理の問題点」「建設業界で推進されている働き方改革」などを紹介しました。
建設業界では現在、働き方改革を推進する企業が増えているため、施工管理の動労環境も改善の一途を辿っています。今後はさらに働き方改革の導入が進むと予想されているため、施工管理は職としての人気も上がっていくでしょう。
ただし、現在はまだ100%の導入が完了したわけではありません。そのため、施工管理として働きたい人は、建設業界や企業に詳しい転職エージェントに求人を紹介してもらうなどして、慎重に企業選びを行うことが大切です。
百田 遼太郎