建設業就業者は減少傾向にあり、若手が不足している状況です。
一方で、建設需要は増加傾向にあり、それに伴い施工管理職の需要が高まっています。
若手にとっては施工管理職に就くチャンスだといえるでしょう。
今回は、施工管理技師に若手が少ない理由と若手にチャンスがある理由、 国が行う若手不足対策について解説します。
施工管理技師は若手が少ない
若手の施工管理技師は不足しています。建設業界全体の高齢化が進んでいることや、3Kイメージ、長時間労働から新卒入社3年目までに離職する人が多いことが理由としてあげられます。
若手の施工管理技師が少ない理由について、詳しく見ていきましょう。
建設業界全体の高齢化
日本国内は少子高齢化社会を迎えており、多くの業界・業種で人手不足が課題となっています。
その中でも建設業界は全体的に高齢化が進んでおり、若手の施工管理職は比較的少ないです。総務省が発表している建設業および建設工事従事者の現状の労働者分布を見ると、55歳以上が約34%、29歳以下11%というデータが出ています。
これは、経験と技術が重視される業界の性質と、若者の建設業界への就職意欲の低さが影響しています。しかし、高齢化により人材不足になっている状況は、若手にとっては施工管理職に就くチャンスだと言えます。若手が施工管理職に就くためには、自身のスキルを高めるだけでなく、業界の動向を理解し、自身のキャリアパスを計画することが重要です。
3Kイメージ
かつて建設業界といえば「3K」が常識であると言われていました。
「3K」とは、「きつい」「汚い」「危険」を指します。
これは建設業に取り組む上で肉体労働且つ体力が必要であり、衛生面や安全面で問題のある現場が多いことから若者の間で敬遠されていた背景があります。
しかし、現在は国土交通省の主導により建設業界の働き方改革が推進され、3Kを「新3K」と呼ばれる「給料が良い」「休暇が取れる」「希望が持てる」に変えるための取り組みが進められています。
また、施工管理職は現場の安全を確保する重要な役割を担っており、若手がこの役割を果たすことで、建設業界のイメージ改善にも寄与できます。
長時間労働
建設業界では長時間労働が常態化しています。建設需要が拡大すると、発注者の要求により、場合によっては要求されたハードな工期で工事を行うケースが発生するためです。
また、悪天候で工期が遅れた場合、長時間労働を強いられる場合もあります。
しかし、政府は時間外労働の上限規制や36協定の強化を進めており、今後の労働時間の短縮が期待されます。これにより、若手が働きやすい環境が整う可能性があるでしょう。
若手が施工管理職に就くためには、労働環境の改善に向けた業界の動向を理解し、自身の働き方を考えることが重要です。
若手が施工管理職に就くチャンスはある
建設需要は増加傾向にあり、これに伴い施工管理職の需要も高まっています。
特に、インフラ整備や災害復旧、都市開発などのプロジェクトが増えているため、若手が施工管理職に就くチャンスは広がっています。
これらのプロジェクトは社会的な意義が大きく、施工管理職として参加することで、自身のキャリアを大きく前進させることが可能です。
人材不足により若手の採用を強化
建設業界の人材不足は深刻で、企業は若手の採用を強化しています。これにより、若手の施工管理職への道が開かれ、キャリアアップのチャンスが増えています。
もし異業界・異職種から施工管理職に転職したいなら、転職エージェントの活用をおすすめします。
特に施工管理に特化した転職エージェントなら、自身のライフスタイルや求める給料に合った企業への転職をサポートしてもらえるでしょう。
国が行う若手不足対策
建設業界の若手不足は問題視されており、国もその対策を行っています。
主な対策である以下の5点について、詳しい内容を見ていきましょう。
- 長時間労働の是正
- 給与の適正化と社会保険加入の徹底
- 生産性向上
- ICTによる業務効率化
- 女性の積極的な採用
長時間労働の是正
政府は建設業界の長時間労働の是正に取り組んでいます。これまで建設業界では、36協定で定める時間外労働の上限の制限を受けていませんでした。しかし、2024年4月からは罰則付きの時間外労働規制が適用されます。違反すると6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられる可能性があり、企業に対する良い抑止力になっています。
これにより、若手が働きやすい環境が整うことが期待されます。若手が施工管理職に就くためには、労働環境の改善に向けた政策の動向を理解し、自身の働き方を考えることが重要です。
給与の適正化と社会保険加入の徹底
政府は給与の適正化と社会保険の加入を徹底することで、若手の建設業界への就職意欲を高めています。これにより、施工管理職への若手の参入が増えることが期待されます。若手が施工管理職に就くためには、自身の給与や社会保険の状況を理解し、適切な就職先を選ぶことが重要です。
生産性向上
政府は建設業界の生産性向上を目指しています。IT技術の導入や働き方改革により、若手が活躍しやすい環境が整うことが期待されます。
これにより、若手が施工管理職に就くためには、新たな技術の導入や働き方改革の動向を理解し、自身のスキルを磨くことが重要です。
国土交通省による労働者支援
国土交通省では、建設業界全体を対象に、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の利用を推進しています。これは、技能者を適切に処遇するための、建設業共通の制度です。
技能者の資格や社会保険の加入状況、現場の就業履歴などを登録してデータ化することで、労働者の技能や経験を客観的に評価できます。キャリアパスや処遇の見通しにも活用され、労働環境に不安をもつ方も安心して働けるよう整備が整えられています。
【参考】国土交通省「建設キャリアアップシステムポータル」
ICTによる業務効率化
近年ICT化が進んでいますが、建設業界も例外ではありません。例えば深刻な人手不足を解消するために、ICT機器や情報処理テクノロジー技術を工程に取り入れれば業務効率が良くなり、労働者の負担軽減に役立ちます。
国土交通省は、ドローンの活用や3次元データによる施工、施工管理、建設機械の自動運転化といった、建設業界の「i-construction(アイ・コンストラクション)」を推進しています。
現場の測量から設計、施工、検査、建設物の維持管理までのすべてのプロセスにICT機器を導入し、全体の生産性向上を目指す取り組みであるため、現場の少人数化を実現します。
【参考】国土交通省「i-construction(アイ・コンストラクション)」
女性の積極的な採用
これまで建設業界は、「体力が必要できつい仕事」というイメージがあり、女性からは敬遠されがちでした。しかし、建設業では女性の採用を積極的に進めており、性別を問わず就業のチャンスが広がっています。
女性や若い世代の労働者を増やすために、建設業界では労働環境の改善が進んでいます。国土交通省でも「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画~働きつづけられる建設産業を目指して~Plan for Diverse Construction Industry where no one is left behind」を策定して、入職者に占める女性の割合を、令和6年までに前年度比で増加させることを目指しています。
目標は女性が就業しやすく、長く働き続けられる職場です。官民一体となって改善に取り組んでいくことです。
【参考】国土交通省「建設産業における女性の定着促進に向けた取組について」
まとめ
若手にも施工管理職に就くチャンスはあります。
建設需要が増加傾向にあることに伴い、施工管理職の需要も高まっているためです。
建設業界といえば「3K」のイメージがあるかもしれませんが、近年、建設業界の働き方改革が推進され、「給料が良い」「休暇が取れる」「希望が持てる」の「新3K」が浸透しつつあります。
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百田 遼太郎