2021年より施工管理技士の制度が見直され、試験基準の改善や士補の新設など、受験者にとってメリットの大きい変更がありました。その結果、施工管理技士の取得を目指す人が年々増加しています。
そこで本記事では、施工管理の資格「建築施工管理技士」を取得するメリットや難易度について解説します。
「資格を取得するために勉強する価値はあるのだろうか」とお悩みの人や、施工管理の資格について興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
施工管理は全7種類
施工管理は全部で7種類あります。
資格の種類 | 特徴 |
---|---|
土木施工管理技士 | トンネル、道路、上下水道などのインフラ整備を請け負う |
建築施工管理技士 | 住宅、ビル、マンションなどの建造を請け負う |
管工事施工管理技士 | 空調設備、浄化槽などの管工事を請け負う |
電気施工管理技士 | 照明設備、変電設備などの電気工事を請け負う |
電気通信工事管理技士 | モバイル通信の基地局設置、インターネット工事などを請け負う |
建築機械管理技士 | 建設機械を利用する工事を請け負う |
造園施工管理技士 | 学校、遊園地、道路などの造園工事を請け負う |
土木、建築、建設機械の工事現場は似ている部分が多いため、一部業務の内容が重複しています。
以下では「建築施工管理技士」を中心に、取得するメリットや難易度について解説します。
施工管理の資格「建築施工管理技士」とは
建築施工管理技士には1級と2級があり、どちらも国土交通省大臣が指定した国家資格です。
どちらの資格も施工管理を目指すうえで重要な資格とされており、資格取得者は建設業界で重宝されます。
重要性の高い資格であることから取得の難易度が高いことで有名でしたが、令和3年より資格のあらゆる条件が変更され、取得しやすく、よりメリットの多い資格へと変わりました。
以下にて1級建築施工管理技士と2級建築施工管理技士について詳しく解説します。
1級建築施工管理技能士の特徴
1級建築施工管理技士は扱える工事現場の制限がありません。
建築、土木、鋼構造物、舗装、電気工事、造園工事、管工事の特定建設業7業種を扱うためには本来、営業所ごとに専任技術者もしくは監理技術者を配置しなければなりません。しかし、1級建築施工管理技士であればいずれも請け負うことが可能です。
つまり、1級建築施工管理技士は、現場の規模が大規模であるほど必要性が高まり、多方面からの需要が高まります。
ただし、大規模な工事を請け負うことができる1級建築施工管理技士は資格取得の難易度が高く、以下いずれかの経験が必要です。
- 大学(指定学科)を卒業して3年以上の実務経験を積んでいる
- 高校を卒業後して10年以上の実務経験を積んでいる
- 2級建築施工管理技士を保有している
いずれかの条件を満たし、第一次試験と第二次試験を突破することで1級建築施工管理技士を取得できます。
2級建築施工管理技能士の特徴
2級建築施工管理技士を取得することで品質管理、工程管理、安全管理などの業務が行えます。
その他にも、クライアントとの打ち合わせ、施工計画の作成など、業務の幅は非常に広いです。中には監督業務や進行の管理といった仕事も含まれるため、責任感が強い仕事と言えるでしょう。
しかし、2級建築施工管理技士と1級建築施工管理技士で任される業務は大きく変わりません。2級と1級で異なるのは仕事の範囲です。
たとえば、4,000万円以上のコストを投下する規模の大きい建設現場の場合、1級建築施工管理技士の資格が必要になります。
つまり、1級建築施工管理技士は、2級建築施工管理技士よりも規模や責任が大きい建設現場を任せてもらえるため市場価値が高く、多くの企業で需要が高いということです。
施工管理の資格を取得する3つのメリット
施工管理の資格を取得するメリットは次の通りです。
- 専任の技術者として仕事ができる
- 監理技術者・主任技術者になれる
- 自分の市場価値が上がる
1.専任の技術者として仕事ができる
建設現場の工事には、建設業許可を受けたあと、営業所ごとに専任の技術者を配置しなければなりません。
専任の技術者と認められるためには、施工管理技士の資格を持っているか、一定の実務経験年数を満たしている必要があります。
つまり、施工管理技士は常に一定以上の需要があるため仕事を失うリスクが低く、将来的にも安定している職業だと言えます。
2.監理技術者・主任技術者になれる
1級建築施工管理技士を取得することで主任技術者に、1級建築施工管理技士を取得することで監理技術者として従事することが可能です。
いずれも現場をまとめる重要な仕事であり、法律により現場ごとの配置が義務付けられています。
特に1級建築施工管理技士を取得することで従事できる監理技術者は、17業種すべてに就けるため、建設業界では非常に重宝されます。規模の大きい現場での仕事になるため、監理技術者本人も大きなやりがいを感じながら働くことができるでしょう。
3.自分の市場価値が上がる
施工管理技士の資格を取得することで仕事の幅が増え、規模の大きい現場を担当できるため、建設業界での市場価値を上げられます。
自分の市場価値を上げるメリットは次の通りです。
- 転職により年収を上げられる
- 自分が希望する条件で働けるようになる
- キャリアアップを実現しやすくなる
こういったメリットがあるため、これから長期にわたって施工管理の仕事を続けたい人は、積極的に資格を取得するとよいでしょう。
施工管理の資格試験は難しい?
施工管理の資格試験はそこそこの難しさだと言われています。ただし受験資格が必要になるため、簡単に取得できる資格ではありません。
次に実際の合格率を見てみましょう。
施工管理技士の合格率(2022年)
2022年、建設施工管理技士1級の合格率は一次試験が46.8%、二次試験が45.2%となっています。
電気三種や一級建築士の合格率が10%前後であるため、施工管理技士の難易度は中くらいだと言えるでしょう。
また、建設管理技士2級の合格率は一次試験が63.8%、二次試験が37.7%となっています。2級は一次試験の突破率が高いものの、二次試験は1級の合格率よりも低いです。
2級の二次試験に合格すると「1級の受験資格を得られる」「資格が付与される」などのメリットが多い反面、試験の難易度自体は高く、試験を突破するのは難しいです。
【参考】令和4年度2級土木施工管理技術検定「第一次検定(後期)」及び「第二次検定」合格者の発表-国土交通省
施工管理技士の取得にはまず経験が必要
前述の通り、施工管理技士の資格を取得するためには、学歴に応じた実務経験が求められます。
そのため、施工管理技士は他業種からキャリアチェンジするために取得する資格というより、施工管理として働く人がキャリアアップのために取得する資格というイメージです。
また、資格の勉強も実務経験を通して覚えることで、効率良くインプットできます。
さらに近年では人材不足の影響もあり、未経験からでも始められる施工管理の求人が増えているため、資格の取得を考えている人はまずは就職し、現場での経験を積むとよいでしょう。
まとめ
本記事では「施工管理技士の資格の特徴」「資格の取得方法と取得のメリット」などを紹介しました。
施工管理技士は、毎年30~40%の人が合格しているそこそこ難易度が高い国家資格です。そのため、継続的な学習を続ければ決して難しくはないでしょう。
しかし、受験資格を得るためには学歴に応じた実務経験が必要になるため、未経験の人はまず現場で経験を積まなければなりません。
施工管理は無資格、未経験でもチャンスがある職業であるため、興味がある人は積極的にチャレンジしてみるとよいでしょう。
百田 遼太郎