工程表とは、工事全体の進捗を視覚的に管理するためのスケジュール管理・作業予定管理表のことです。
工事の品質や原価は工程速度に影響されるため、工程表を用いた工程管理は施工管理のなかでも重要です。
工程表とは
工程表は、工事における各タスクの開始日、終了日、期間、前後の連関性を明確に示し、全体の進行状況を一目で理解可能にします。
工程表があることで、工事の進行状況を管理しやすく、全体の効率が向上します。
また、天災などの際には工程表を修正することで、その後の工事を円滑に進められます。
行程表との違い
工程表と似ている用語で「行程表」があります。
読み方は同じ「こうていひょう」でどちらも予定表、計画表といったニュアンスを含みますが、少し意味合いが異なるため注意が必要です。
行程表は各行程の時間配分を示すもので、特定の日のスケジュールを管理します。
一方、工程表はプロジェクト全体の各工程の開始・終了日、期間、前後関係を示すものです。つまり、「工程表」はよりミクロな視点でのプロジェクト管理での使用されるもので、「行程表」は工程表よりも漠然とした内容で、広い範囲をカバーしています。
工程表の目的・メリット
工程表はプロジェクトを円滑に進行させるための重要なツールです。
主な目的とメリットは以下の3つです。
- 進捗の見える化
- 納期管理
- コスト削減
進捗の見える化
工程表の主な役割は、工程を適切に管理して、契約した納期までに確実に工事を終わらせることが挙げられます。
正確な工程表を作成することで誰がどの作業をいつまでにやればいいのかプロジェクト全体の進捗状況を一目で把握することができます。
これにより、必要な改善策を迅速に打つことが可能となったり、スケジュールや個別の納期が明確になったりするため、プロジェクトを円滑に進行できます。
納期管理
納期管理はプロジェクト運営において重要な要素です。工程表を用いることで、各工程の期間や納期を明示的に管理できます。
場合によっては他のタスクのスケジュールを調整し、納期遅延のリスクを大幅に軽減できます。
コスト削減
工程表を用いることで、効率的な作業スケジュールを策定し、作業全体の中でどこに無駄があるのか、作業の効率化を図れる部分があるのかを理解することができます。また、予期せぬコスト増加のリスクを回避することも可能です。
工程表の種類
工程表の種類は以下の5つです。
- バーチャート工程表
- ガントチャート工程表
- グラフ式工程表
- ネットワーク工程表
- 曲線式工程表
- 座標式(斜線式工程表)
それぞれの特性を理解し、プロジェクトの性質に応じた選択が求められます。
①バーチャート工程表
バーチャート工程表は最も基本的な形式です。
縦軸に作業項目、横軸に各作業の項目作業日を記載し各工程をバーの長さで表現します。
バーチャート工程表は作成のしやすさとわかりやすさが特徴です。
全体の流れを一覧で把握できるため、初心者でも理解しやすい工程表の1つと言えるでしょう。
また、作業をおこなう日付が記載されているため、工程を把握しやすいです。
ただし、バーチャート工程表は縦軸の作業項目それぞれの関連性が分かりにくいため注意が必要です。
②ガントチャート工程表
ガントチャート工程表は縦軸に作業項目、横軸に進捗率を記載する工程表で、各工程間の依存関係を明確に視覚化します。バーチャート工程表と共に基本的な工程表の1つです。
作業が進行するにつれて進捗率を書き加えていく仕組みになっており、細かい部分まで見なくても、直感的に進捗がわかる点が大きなメリットです。
③グラフ式工程表
グラフ式工程表は、先述のバーチャート工程表とガンチャート工程表を組み合わせた工程表です。表の縦軸には進捗率、横軸に日数を記載しています。グラフ式工程表は時間の経過に沿った進捗の変化をグラフで表現するため、進行状況の視覚的な把握が容易で細かな進捗管理が可能。どの作業が遅れていて、作業の遅れがどの作業に影響が出るのか、ということがわかりやすい工程表です。
④ネットワーク工程表
ネットワーク工程表は、作業の関連性について丸「〇」と矢印「→」を使って工程期間を表す工程表です。見方としては矢印の上には作業名、下には作業日数を記載します。各工程間の相互関係性を把握しやすい形で表現されており、作業に必要となる工数や作業間の関連性、工程の流れなどを把握するのに適していることが特徴です。これにより、プロジェクト全体の最適な経路を導き出すことが可能です。
⑤曲線式工程表
曲線式工程表は、時間とリソースの使用状況を表すことに特化しています。縦軸に進捗率、横軸に日数を記載する工程表です。
建築現場で見かけることの多い工程表の1つで、以下の名称が用いられることもあります。
- 工程管理曲線
- バナナ曲線
- S字カーブ
- 出来高累計曲線
特徴としては、全体のスケジュールに対して進捗状況を一目で確認できる点で、リソースの最適な割り当ての調整を容易にしやすいことも曲線式工程表の強みです。
⑥座標式(斜線式工程表)
座標式工程表は、「斜線式工程表」とも呼ばれ、トンネル工事のように進捗が距離のみによる場合などに適した工程表です。
縦軸を工期(日数)、横軸を距離とし、工程を斜線で示します。
施工順序や日程のズレや、施工場所と施工時期の進捗状況が直視的にわかることが特徴です。
ただし、工種間の相互関係や部分的な変更があった場合に全体に及ぼす影響がわかりにくいです。
そのため、バーチャートと併用して上記の欠点を解消する必要があります。
まとめ
工事の品質や原価は工程速度に影響されるため、工程表を用いた工程管理は施工管理のなかでも重要です。
工程表の目的・メリットや種類を理解して、適切な工程管理を行いましょう。
百田 遼太郎