施工管理の五大管理とは、施工管理者が業務を進めるうえで重要な概念の一つです。
本記事では、施工管理者が知っておくべき五大管理の詳細と、それぞれの優先度を解説します。
四大管理については「施工管理 四大管理」で詳しく紹介しています。五大管理は、四大管理を包括するものであるため、両方について理解しておきたい人はこのまま読み進めてください。
施工管理の五大管理(QCDSE)とは?
施工管理の五大管理とは、施工管理が行う主な管理業務で、次の5つに分けられます。
- Quality(品質)
- Cost(原価)
- Delivery(工程・工期)
- Safety(安全)
- Environment(環境)
以下ではそれぞれで行う業務内容について詳しく解説します。
1.Quality(品質)
五大管理の一つであるQuality(品質)とは、建設物の安全性や品質が常に一定以上に保たれるよう、設計書に基づいた工事などをすることです。強度や耐震などの基準を満たすために行う管理業務がこれに該当します。設計書通りに工事が進んでいるかどうかは毎日、もしくは進捗ごとに確認するケースが多いです。
そのほかにも施工管理業務では、発注元に建設物の品質や安全性を証明するために施工状況や計測状況を写真撮影することもあります。とくに、建物の壁内部に施す耐火工事や地中の基礎など、完成した状態の建物では確認できない部分の品質管理では重要な業務となります。
2.Cost(原価)
五大管理の一つであるCost(原価)とは、建物の品質とのバランスを見ながら人件費や材料費といったコストや原価を管理することです。
企業の利益が優先的になるため、コストは可能な限り下げられるように工夫する必要があります。具体的には、工事を開始する前に利益目標額と費用を記載した予算書を作成したり、必要なコストと削減可能なコストの把握に努めたりします。
また、原価管理の際には以下の業務も重要です。
- 材料を無駄にしないよう常に状況を把握する
- 材料のコストを安くできるよう多くの見積りをとる
- 実行予算書通りに工事が進んでいるかを常に確認する
- 赤字になりそうな場合は予算書を見直す
このように、施工管理のコスト管理には適切な状況把握と柔軟な対応が求められます。
3.Delivery(工程・工期)
五大管理の一つであるDelivery(工程・工期)とは、建設工事が納期に間に合うよう、作業のスケジュールを管理することです。完成が予定した工期より遅くなってしまうと違約金が発生するケースもあるため、責任の重い業務の一つとも言えます。
一見、単純な作業のように見えますが、建設物の品質と予算を適切に管理しながら納期に間に合わせるのは簡単なことではありません。そのため、施工管理者は、事前に立てた計画と実際の進捗状況を常に確認する必要があります。
進捗を管理するうえで重要なのが工程表の作成です。工程表とは、作業項目や作業にかかる日数、工事の進捗率などを踏まえたうえで作成する表です。的確な工程表を作成することで建設作業の工程を可視化したり、後期を短縮したりすることが可能です。
ただし、工期ばかりに目がいってしまうと予算オーバーにつながる可能性があるため、コスト管理と同時並行で管理することが大切になります。
4.Safety(安全)
五大管理の一つであるSafety(安全)とは、作業員の安全面を管理することです。建設工事中のケガは全体の作業がストップしてしまう可能性があることもあり、重要視される業務の一つです。
また建設現場は至るところに危険が潜んでいるため、事前に安全対策を行うことが重要視されます。具体的な安全管理は次の通りです。
- 手すりを設けて滑り落ちるのを防ぐ
- 安全帯の使用を呼びかける
- 機械の定期的に点検して安全を保つ
- 朝礼で作業上の注意点を伝える
- ヒヤリ・ハットを全体でで共有する
- 事故が起きる可能性のある箇所に安全看板を設置する
ヒヤリ・ハットとは、危ないことがあったものの、事故にはつながらなかった事象を指します。ヒヤリ・ヒットを把握しておくことで、大きな事故を未然に防ぐことが可能です。
また、施工管理者は工事の最中も現場を巡回し、安全作業をしてもらうための声かけをすることが大切です。安全対策は作業員一人ひとりが安全を心がける必要があるため、周知を徹底し、根気強く取り組むことが求められます。
5.Environment(環境)
五大施工管理の一つであるEnvironment(環境)とは、自然環境、周辺環境、職場環境の3つの要素から成り立っています。
それぞれの詳しい意味は次の通りです。
- 自然環境:建設現場周辺の木々、空気、水、地盤などの自然環境への影響を考慮すること
- 周辺環境:建設現場で発生する騒音、振動、重機の排気ガスなどに考慮すること
- 職場環境:作業員が働く職場に考慮すること
これらの環境は、周りの自然や周囲の状況によって優先順位が変わります。そのため、施工管理者は各現場の状況を把握し、どの環境を重視すべきなのかを的確に判断する必要があります。
また、職場環境においては作業員との関係を築いたり、風通しの良い現場を整えたりなど、積極的にコミュニケーションをとることが重要になります。作業員との信頼関係ができていないと現場での事故につながる可能性もあるため注意しておきましょう。
施工管理が知っておきたい五大管理の優先順位
先ほど紹介した五大管理には優先順位があります。具体的には次の通りです。
- Safety(安全)
- Environment(環境)
- Quality(品質)
- Cost(原価)
- Delivery(工程、工期)
施工現場では事故が起きず無事に工事を終えることが最優先されます。環境は作業員の安全に直結することから優先度が高くなっています。
ただし、五大管理は必ずしも上記の通りなるとは限りません。業界・職種によって重視される点が異なるためです。
たとえば、業界によってはQuality(品質)の優先度がもっとも高く、Environment(環境)がもっとも低い場合があります。
五大管理を行う施工管理技士に向いている人の特徴
五大管理を行う施工管理技士に向いている人の特徴は次の通りです。
- トラブル対応力がある
- コミュニケーションスキルが高い
- リーダーシップがとれる
1.トラブル対応力がある
トラブル対応力がある人は施工管理に向いています。施工現場では、悪天候、資材の未達といったトラブルが頻繁に起きるためです。
トラブル対応が遅れると工期に遅れが生じ、発注者からの信頼を失う可能性があります。
そのため、これまで会社などでのトラブルに対応した経験がある人は、施工管理は向いていると言えるでしょう。
2.コミュニケーションスキルが高い
コミュニケーションスキルが高い人も施工管理に向いています。施工管理者は、作業員、職人、施主など、さまざまな人と関わりながら仕事を進めるためです。
高いコミュニケーションスキルをもっていれば、周りの人と信頼関係を築けるため、仕事もスムーズに進みやすくなるでしょう。
3.リーダーシップがとれる
リーダーシップがとれる人も施工管理に向いています。施工管理者は現場にいるさまざまな人をまとめて建設現場を完成へと導く役割があるためです。
良いリーダーシップをとることができれば現場で働く人のモチベーションも上がりやすくなるため、工事が円滑に進みやすくなります。
したがって、これまでにチームを引っ張って何らかの成果を残した経験がある人は施工管理に向いていると言えるでしょう。
まとめ
本記事では「五大管理の意味と優先順位」「五大管理を行う施工管理者に向いている人」などを紹介しました。
五大管理は、建設工事を完成させる過程で重要になる5つの要素を指します。
また各要素の優先度は業界・業種により異なりますが、施工管理においては「安全がもっとも重要視される」と覚えておきましょう。
百田 遼太郎