「施工管理って休みがあるの?」という疑問をお持ちの人も多いことでしょう。これは、施工管理の仕事が簡単ではないことから付いたイメージです。
では実際のところ施工管理はどれくらい忙しく、どれくらい休んでいるのでしょうか。
今回は、国が公表したデータをもとに施工管理のお休み事情について解説します。
施工管理として働く人のお休み事情
令和4年に厚生労働省が発表したデータによると、建設業の1日平均あたりの労働時間は7時間44分でした。
また、労働者一人あたりの有給休暇の消化日数は17.8日であることが分かっています。業界全体の平均が17.6日であるため、建設業界の有給休暇の消化日数は、一般業と大きな差がないと言えるでしょう。
1日あたりの労働時間や有給休暇の消化日数から、建設業の休みや労働環境は平均レベルという見方ができます。
施工管理はいつが休みなの?
施工管理の休みは企業によって異なります。
以前は土日休みがない企業も多かったですが、近年では働き方改革が推進されていることもあり、施工管理の休みは年々増加しています。
たとえば、施工管理を募集している企業で一般的に多いとされる「年間休日120日以上の会社」での休みは次の通りです。
- 土日祝
- GW休暇
- 夏季休暇
- 年末年始休暇
このように、施工管理でも他の業界と同程度の休みを取得できます。
施工管理が「忙しい」と言われる理由
「建設業界や施工管理は忙しい」というイメージを持っている人は多いかもしれません。実際、厚生労働省が平成30年に公表したデータによると、建設業の年間総休日数は104日でした。
全業界の平均が107日であるため、建設業の総休日数は平均より3日少ないことが分かります。
ちなみに、最も総休日数が多いのは宿泊業・飲食サービスで97日、最多は情報通信業で118日でした。
では、なぜ昔の施工管理は休みが少なかったのでしょうか。
施工管理の休みが少ない理由
施工管理の休みが少ない理由は下記の通りです。
- 工期の戦い
- 人材不足
- 仕事の幅広さ
1.工期との戦い
施工管理の仕事は常に工期との戦いです。発注者に依頼された工期内に工事を完成させなければ信用を失い、継続的な発注につながりにくくなります。
しかし、工事現場では職人や大工さんの欠勤や資材の未着など、さまざまなトラブルが起きます。
トラブルが起きても工期は伸びないため、施工管理は遅れた作業を取り戻すために残業をしたり、休日を返上して仕事をしたりしなければなりません。
最初は、トラブルを未然に防ぐスキルが身に付いていないため、工期に悩まされることも多いですが、経験を積めばスケジュール管理力も上がり、スムーズに工事を行えるようになるでしょう。
2.人材不足
近年、東京や大阪といった首都圏で建設ラッシュが続いており、建設業や施工管理の需要が高まっています。
しかし、建設業では若者離れや団塊世代の退職などの影響もあり、人材不足に陥っています。そのため、需要に対して供給が間に合っておらず、慢性的な人手不足がさらに深刻化しているのです。
施工管理も常に人手不足の状況が続いているため、現場一つあたりに配置される人員が少なくなり、常に忙しい状況を作っています。
3.仕事の幅広さ
施工管理はその仕事の多さから忙しいと言われることが多いです。
まず施工管理は、朝礼より少し早く現場入りし、前日できなかった資料や施工計画書の作成をします。朝礼が終わったら現場の作業員を指示・管理し、ときには作業を手伝ってスケジュールを調整します。
18時ごろになると作業員や職人は作業を終了して帰宅しますが、施工管理は事務作業へ移らなければなりません。作成するべき書類は非常に多いため、1時間や2時間で終わらないこともあるでしょう。その日に書類作成が完了しなければ休日を返上することもあります。
施工管理は、こういった理由から休みが少なく、忙しいというイメージが徐々に定着していきました。
しかし、こういった労働環境を改善すべく、国が働き方改革を推進したおかげで、現在の施工管理は少しずつ働きやすい職場環境へと変わっています。
施工管理で推進される「働き方改革」について
国が実施した以下の働き方改革により、現場の労働環境は着実に改善されています。
- 週休2日制
- 給与面での改革
- 仕事の絶対量を削減
これらの改革によって現在の労働環境がどう変化しているのかを解説します。
1.週休2日制
働き方改革によって、週休2日制を導入する動きが強まりました。
また、週休2日制を導入した場合の必要費を適切に把握するために労務費を補正、現場管理費の補正率の見直しなども行われています。
さらに現場で働く人が長時間労働になってしまわないよう「適正な工期設定等のガイドライン」を改定し、無理のない工期設定がしやすくなりました。
単に週休2日制を拡大するだけでなく、導入に伴う費用やリソースを補填するための施策を同時並行で進めています。これにより、休みが増えたことによる弊害を抑えることができ、施工管理も無理なく仕事ができるようになるでしょう。
2.給与面での改革
資格の取得や就業経験などに合った給与や待遇を得られるよう「建設キャリアアップシステム」の稼働を予定しています。本システムを稼働することで施工管理の就業経験などを見える化できるようになるため、経験に合った報酬を得られるようになります。
また、人員がもつスキルや経験を正当に評価するための能力評価制度が策定されました。これにより、スキルアップした際の対価が得やすくなるため、キャリアアップの有益性が上がります。よって、施工管理として働く際に生じる将来的な不安を軽減できるようになるでしょう。
3.仕事の絶対量を削減
施工管理の仕事で大きな割合を占める書類作成の業務を軽減させるために「公共工事における基準類」が改定されます。これにより施工管理が作成するべき書類の絶対量が減るため、労働時間の大幅な削減が見込まれるでしょう。
また、建設現場で稼働できる新技術を導入することにより、現場での作業効率を向上させる働きもあります。
施工管理の魅力
忙しいというイメージがある施工管理ですが、他の仕事にはない魅力がたくさんあります。
たとえば、トンネルや道路といったインフラ整備に施工管理として携わり、完成させた際は「多くの人の役に立つ仕事をしている」と強く実感できるでしょう。
そういった実感は仕事のモチベーションや自己肯定感の向上につながるため、人生をより幸福なものにしてくれます。
その他にも、マンションや一軒家など、自分が作ったものを後世に残せることや、大きな工事を完成させた際に得られる達成感など、施工管理には多くのやりがいがあります。
現在では、働き方改革により労働環境も改善されているため、施工管理はこれからさらに人気の高い職業になっていくでしょう。
まとめ
本記事では「施工管理のお休み事情」「施工管理の休みが少ない理由」などを紹介しました。
施工管理は仕事の多さや労働時間の長さから「休みがない仕事」というイメージが付きました。
しかし、現在では働き方改革が加速した影響で、ホワイトな職場環境が目に見える形で増加しています。
施工管理には、他の仕事では味わえない魅力もたくさんあるため、施工管理に興味がある人はぜひ積極的に検討してみてください。
百田 遼太郎